白水独言

 勝海舟のおやじ勝小吉が書いた本に「夢酔独言」というのがある。江戸時代、旗本という恵まれた地位にありつつも、むしろ巷(ちまた)の人々とかかわるのが好きで、言いたい放題をべらんめえ調でまくし立てていたんじゃないかなあと思わせるおやじが、こんな風に生きていきゃあいいんじゃないかと「独言」、つぶやいた内容のものだ。勝海舟を含めた次の世代に伝えたかった事じゃないかと思う。

 自分も63才になる。自分の思いを貫けるのはあと10年がせいぜいだろうと思う。今のうちにやりたいことをやり、言いたいことを言っていこうと思うので、自分が代表となった「北八もののけサポーターズ」に一枠設けた。

 北八もののけサポーターズのこと

 この名前をつけた由来は、北八がすきであること、もののけ達が住みやすいようにしたいこと、自分も世間に貢献したいが力が限られているからみんなに集まってもらって役にたてればいいと思うことだ。

1.北八が好きなこと

 北八は二十歳の頃初めて出会った。苔の緑が美しく秋の原生林の芳ばしい香りの中をどこまでも歩いて行った。当時は夏休みが終わると人気がなくなり、1週間ほどいても出会うのは数人程度だった。一人っきりで夜テントを張ると、数日は大きな闇に飲み込まれそうになって恐ろしかったが、そのうち目も心も落ち着いてくると、五感は次第に闇の中に開いていった。尾根を越えて吹きわたってくる風は、木々の葉の一枚一枚を揺らし、すり抜け、森の香りを乗せて遠くにとどろく谷川へと向かって去っていく。虫達はそれぞれに小さく息づき、DNAに宿る思いで生きている。高い岩の上に立てば星々の下にこの大きな原生林が白駒池を抱いて広がっている。朝には雲海を太陽が昇ってくる。

 こうして数日、森の中を一人で歩き回っていると、あるとき感覚が自然に向かって開き切った「自分」がいることにふと気が付いた。「獣の感覚」はこういうものなのかな。五感が捉えるものは常にこの世で初めて見るような新鮮さに溢れ、純粋にそれを享受する自分は限りなく0に近づいている。哲学者の森有正のいう「経験」の入り口の「感覚」に至ったのかもしれない。

 赤子がこの世の光をはじめて感じるとき、人が死を予感し覚悟するとき、本当の創造が行われる現場ではこうした感覚にあるのかもしれない。

2.もののけの住みやすいこと

もののけが住みやすいとは、彼らが木の洞でも苔の陰でも山の後ろでもどこにいても不思議の無い環境を維持すること、またはそうしたイマジネーションを我々も持ち続けたいねということ。

3.協力して世間の役にたちたいこと

 何もしなければ高齢化する地方には衰退が待っている。それを、みんなの知恵や能力を少しづつ出し合ってもらって負のスパイラルを遅らせるか、はたまた逆に回転させられるか。一人の力は限られているが、何人かで取り掛かると意外に大きな結果が出る。地元の人々、町外、国外からも集まってもらって盛り上げていくと意外なことになるかもしれない。

 時間と金も使って参加すると何かいいことがあるのかって?充実感と交流での出会いだよ。まして、自然の中で行うことは、都会にはない爽快感を与えてくれる。一日中草を刈っていると禅の境地に近づいて、くよくよ考えていることが頭の中から抜けていくのさ。そうして、そのあと風呂であったまり、地元の農家さんの野菜と地酒を堪能する。世代や地域を超えて交流することで、損得ばかり考えストレスまみれの都会の暮らしからもう一度自分を考えるチャンスがもらえるのさ。

 

 

 

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